1955年から2003年まで、12期48年連続して村長をつとめている。
亡くなる5ヶ月前まで在職していたという。
一瞬、フィクションではないかと思ったが、ちゃんと実在する村であり
村長だった。
この本は、約半世紀の村長の事績と村の歴史を追っている。
最初に作ったスキー場からはじまって、ほとんどが村営である。
国の補助金を引き出し、豪雪と水害、過疎の村をさまざまな政策とアイデア
で、歯止めをかけ村おこしに結びつけていった記録である。
観光と農業にかかわるメニューのほとんどは、ここに出尽くしているといっても言いすぎではないと思う。
特長的なことは、その実施にあたっての人の育成である。
外から呼んできて雇ったり、なにか速成効果を狙う策をとっていなくて、
役場職員を海外研修(主にドイツなどヨーロッパ)に送りだす。
研修視察などという生易しいものではない。
1年2年と実地に農場やホテルやハム工場などにつとめさせ
経営ノウハウと技術をマスターさせるのである。
村に帰ったら、今度は部局の責任者となって、農場なり、ホテルなり、工場を、最初から立ち上げて行くのである。
たとえば、山羊のチーズ工場をつくりたいというので、
職員をスイスの山羊牧場・チーズ工房へ1年派遣して、
帰ってその工房の責任者にしている。
(私は、この部分が目に入って図書館で借りてきて全体を読んだ)
ノウハウ自体を学ぶことも当然だけれども、海外の言葉もわからぬところへ
突然放り出されて、溶け込み、なんとかして学び、ものにしていくというプロセスで人間的な成長をも加味しているものと思われる。
根性論というより、海外生活をすることで、視野の広さを自ずから身につけること、それが村の公務員として、事業をになう基礎の力になっていくことを期待したのではないか、と思われる。
時代は変わって、
今、半世紀もの長い間、村長を続けることも
また、数多くのメニューの財源を国に求めることも
およそ不可能な時代になっているけれど、
黒川村に蓄積されたノウハウと人材育成の考え方は、
民間主導で村おこし・町づくりをすすめるにあたって
何らかの示唆を与えていると思う。
「あれは古きよき時代だから出来たこと」といって
葬ってしまうには、あまりにも豊富な蓄積をなしているからである。
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