2007年06月11日

本間義人著「地域再生の条件」、自分の力で、

本間義人著「地域再生の条件」岩波新書、2007年1月

あったか村福賀の近くにあり、お世話になっている集落が、今年、中学生以下がいなくな
ってしまった。
子供会がこれでなくなってしまった。子供会の世話も出来なくなり、予算も計上する必要
がなくなってしまった。子供会の作業として実際は大人の恒例行事として行っていた花壇
作りも、名実ともに子供会行事ではなくなってしまった。
当然、寂しいことにはちがいなくて、10年後には集落がどうなっているか、と誰もがお
もいをめぐらすことになり、傍目にはみなさん落ち込んでいるのではないかと想像するの
だけれど、実際は、かなりちがっていた。

泥落とし(農繁期後の骨休めをかねた部落の行事)には、ほとんどの人が参加して、今後
の村作りについて熱心に語っていたし、何らかの打開策が必要だという共通の認識が出来
上っていたように感じた。むしろ、ある種の開き直りが生まれて、やる気がみなぎってみ
んな若返ってきたように感じたのは私の思いこみだろうか。
また、「今子供連れてこの集落に引っ越してくれば、その一家はどれほど大事にされるか、
言葉ではいえないであろうよ」とどなたかが語っていたが、とても真実味を帯びていた。

全国の多くの中山間地で同じような事態が進んでいることが報道されている。
さまざまな試みが行われていることも、知らされている。
この本は、それらを集大成した本であり、考え方の整理にとてもよい。


とくに、村とまちの交流、IターンやUターンした人が参加し、経歴や考え方がそれぞれち
がうことがあらかじめ前提であるようなグループにとっては、ひとつの言葉にしても、い
ろいろな理解があり、必ずしも同じことを意味しているわけではないことがおこりうる。
そんな場合、なにも考えを無理に一致させたりすることを急ぐよりも、この本を間におい
て論議して、次第に違いを違いとしてみとめつつ、じっくり共通の柱をたてて行くことが
大事ではないだろうかと思う。

次のような文章がある。地域の力を考察した箇所、160頁〜161頁。
「地域の自律と自立」という見出しで
「自律とは自分で自分の行為を規制すること。外部からの制御を脱して、自身の立てた規
範に従って行動することであり、また自立とは、他の援助や支配を受けず自分の力で身を
立てること(いずれも広辞苑第5版)を指します。つまり、自律とは自己決定による行動
を意味し、自立とはあらゆる部面において他者に依存しないで自らいきることを意味して
いるといっていいでしょう。これまで地方、地域ともにそれらが乏しかったのです。その
典型的なパターンが、国に従っていれば大丈夫、あるいは国のいっていることにまちがい
はないと、霞ヶ関に依存してきたことでしょう。計画から予算の執行(自治体財政を制
約してきた補助金制度が存在したにしても)まで、国にしたがうままできたのです。しか
し、それが誤りであったことは(霞ヶ関以外の)誰もが認めざるをえなくなっているわけ
です。政府が組織した地方分権推進委員会でさえ、そういう認識でした。地方分権にとっ
てもっとも重要なのは、地域がいかに自律と自立を果たすかにかかっているといっていいでしょう。」

抽象論は、具体的に実現していく過程にいるとさまざまな困難が伴ってくるものだけれど
だからこそ、抽象論・理念としてしっかり確認しておくことが大事になる。
そんな意味で、地域おこしの学習会などのテキストに適しているように思う。

一つには、地域再生・村おこしの知識の整理に役に立つ。全国のほぼすべてを網羅しているとみてもいいようだ。知っていること、知らないこと、を一応の事例整理として、つかめる。

ふたつめに、大きな流れを知ることができる。
その根本には、行政と公共事業との距離の問題がある。
著者は、行政中心の地域再生には懐疑的だ。というより批判的だ。もう行政一辺倒の役割とあり方は、はっきり終ったという認識にたっていて、住民主体の地域再生をつくりだす必要を繰り返し訴えている。人権、地場産業の育成、自然との共生、横並びでない独自の地域つくり、などの基本テーマが、住民主体、住民自らの意志として形成されることの大事さを繰り返し説いている。

三つ目に、結局は、どこかの地域が成功したからといって、それをそのまま持ち込んで真
似てもうまくいくはずがなくて、自分の地域の特性と課題をみつめ尽くして住民自らが自
分たちの力で考え抜いて実行する以外にはないことを示している。
結局は、自分たちの力でアタックすることが王道となる。

集落のみなさんの取組みと
あったか村の独自の村作りと
ともに刺激しあいながら、なにかを新たにつくりだせればいいなあと思う。
読んだ人の意見を聞きたいものだ。

posted by 村のトイレ屋 at 07:17| 山口 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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