2007年01月08日

糞をパンに 安岡章太郎編著「滑稽糞尿譚」から 

トイレの本をなにかしら、年頭に読むことにしているが、
今年は、安岡章太郎編著「滑稽糞尿譚」をぱらぱらと開いてみた。
エッセイや短編小説を集めたものだ。(文春文庫、1995年2月刊)

数年前、この本を最初に読んだときは、編者の安岡章太郎の文章が印象に残った。
軍隊生活とトイレの体験を書いた文章だ。軍隊では、心休まるところはトイレしかなかったというものだった。しかも、ずいぶん劣悪な環境なのだ。毎回、糞尿の様子を調べる上官がいて、下痢などしていることがわかれば、厳重に注意されたという。
そんな軍隊生活は、たまらないなあと思って読んだ。
軍隊と排便排泄から平和を望む思想がうまれると思った。
自分が戦地にやられ、みじめなトイレ生活をさせらるとおもうと
戦争につながるすべての流れに反対しておかねば大変だと真剣におもった。

今年読んで、もう少し深く読んでみようと思ったのは、
中村浩「ゾウの大グソ」という文章だ。
今までは読んでいなかったのか、
関心がなかったため読み飛ばして忘れていたのか、
しかし、今年読んでみると、ずいぶん新鮮で印象に残った。

こんな文章がある。
「『クソの問題を解決せずして、インドの繁栄はあるか!』
わたしは、思わず、怒れるネールのごとく、声高にがなった。
すると、このインド青年は、急にショボショボしてしまった。敵は弱しとみてとった私は、
『インドには、2億頭にのぼるウシがいるはずである。このウシの垂れるクソの量は、年間1億6千万トンに達する。これは、インドにとって膨大な資源ではないか!』
と講義をはじめた。
『さて、この牛糞のうち40%、つまり6千トンが燃料として使われ、他の40%が肥料として使われ、残りの20%は風や雨が運び去ってしまう』
インド青年は、あっけにとられて、私の講義に耳を傾けていたが、
『たしかに、おっしゃるように、インドの農民はウシのクソの練炭でささやかに竃の煙を立てています。かれらの多くはひどく貧乏で、このウシのクソを買う金すらもことかいているのです』
と悲しそうに告白した。
『ネールの親爺がもし賢明ならば、人間や牛のクソの資源化をもっと積極的に考えるべきだと思う。インドの4億の人間と2億頭にのぼるウシのクソは、インドのもつ天与の資源である。クソをパンにする研究こそ、君ら若き化学者の考えるべき夢ではないか』
わたしは、ポンと青年の肩をたたいた。インド青年は、はじめて快活に笑って、
”That's a splendid idea!"(そいつはすばらしい考えです)
と叫んで、握手を求めてきた。」

長い引用になってしまったが、
ゾウやウシの糞を燃料だけでなくパンに(食料に)変換させようというアイデアである。燃料については、家の壁に張りつけて乾草させて使っているということは、わたしも知っていた。モンゴルやチベットなどでも家畜の糞は、立派に燃料としていかしている。これだけでもすばらしいと思っていたが、パンにまでするとは思ってもいなかった。いや、この思いつきは、冗談で話をおもしろくするために言っているのであろうと最初は思った。

しかし、この中村浩という人は、本気でやろうとしているようなのである。
中村浩 1910ー1980。元・日本藻類研究所長 と文末に書かれている。
ネットで検索してみるといくつかのトイレ関連書籍もあって、研究をつづけていたようだ。この「滑稽糞尿譚」の中に山田稔というフランス文学者の文章があって、その中に簡単に紹介されていて、どうやら本気らしいこともわかる。
ついでに言うと、スウィフト「ガリバー旅行記」について言及した山田稔の文章もとてもおもしろいが、この紹介は、別の機会にしたい。夏目漱石のスイフト論にまで発展していてわたしの能力の範囲を越えてしまう。

ともあれ、インドに触発されながら、糞尿の食物化の研究課題があって、すすめた人がいるということは、興味深いことだ。先に述べたように、燃料や肥料(液肥も含む)で活用するかたちはずいぶん多い。いや、それすら忌み嫌って、ひたすら河川や湖沼、海に流そうとしているのが、下水道や集落排水事業や合併浄化槽なのだ。処理という名の資源捨て、浪費なのだ。循環型社会といっても名前だけのことなのが実際なのだ。この面からの近代下水道の見直し・反省は絶対に必要なことなのだ。アジアやインドが、その先端に位置することは間違いない。
2002年以来のシャンティ山口とわたしの問題意識と努力もそこにある。

・・・というわけで、今年深めるテーマのひとつが見つかった。
だんだん調べていこう。



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posted by 村のトイレ屋 at 23:58| 山口 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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