2006年09月27日

密談

夜、さっきだけど、山羊と散歩していると
懐中電灯のライトの輪に、
中くらいの大きさのイノシシが入ってきた。
止まって動かない。
イノ「・・・うっ、まぶしいよ。ライトを下げてよ。
   礼儀だろ。無礼なおっさんやなあ」
私 「ごめんごめん、でもあまり急に出てきたものだから」
イノ「まあ、許したるわ、でも今時分何をしてるんや」
モモ「見ての通り、夜の散歩だよ」
イノ「おいおい、山羊も散歩するようになったんか」
ダル「そうや、僕らは昼間小屋の中や電気柵の範囲やから
   運動不足でねえ」
イノ「ほんまかいなあ、ホンとは家出して連れ戻されてるんやろ」
モモ「ちがうよ。家出なんて人聞きの悪い。遠出と言ってほしいね」
ダル「そうだよ、広い川の木の下はどうなっているか、
  誰も食べない草は、もったいないなあと調べに行ってきたんだよ」
イノ「でも、さっきはしょぼくれて歩いていたぜ。
  まあいいや、元気出して帰りや。あんまり人間に見られんようにしてお   きや」
モモ「ありがとう。イノも銃に気をつけてね。11月からだからね」
イノ「おおわかってる、おおきになあ。またなあ」

私「君ら、イノと友達なの?」
ダル「友達だよ。おばあちゃんの湯来祥子のとき
  からの付き合いらしいよ。夜は、時々小屋に来るしね。
  放牧場のときは、ずいぶん世話になったからね。」
モモ「でも僕は、もうひとつ友達と言い切れないなあ」
ダル「どうして」
モモ「粗野なところかなあ、食い意地が張っているというか・・・」
ダル「人間にもいるんだよねえ、出されれば食べる、
   あれば食べるというのが」
モモ「誰とは言わないけれどね」
ダル「割と身近な人間だけどね、人間にしておくには
  惜しいと思うときもあるけれど、山羊にはむりかなあ」
モモ「最低、食べる前にすぐ口に入れないで、一回は嗅いでみるとか
   様子を見てほしいね」
ダル「へちまやさん、イノシシ年の生まれ?」
私「ああそうだけど・・・
モモ・ダル「やっぱりねえ、どうしょうもないねえ」

私「ところで、さっきの話、イノに聞かれていなかっただろうかね」
モモ「歩きながらの説教でしょう、たぶん大丈夫と思うけれど・・・」
ダル「いまどき、一族再興のために我慢してくれなんて
   古すぎですよ。聞かれても信用しないよね」
私「いや、そうではないんだ、言っておくけれどね、
  僕は本当は人間の姿をした山羊なんだよ。
  君らの味方というか、同族なんだよ。だからねえ、
  つらいだろうけれど、ここは我慢して、
  表の集落の方に出るのはやめてほしんいいんだ。
  せっかくのお家再興一族大復活の試みが、
  水の泡と消えてしまうんだ。
モモ「どうして、・・・僕は、もう首輪もロープも、
   狭い小屋も嫌だよ。自由がほしい、拘束は嫌だ、
   山羊には校則がないといっておきながら
   拘束だらけでないですか。
   昨日なんかロープを丸太にくくられて
   動けなかったんだよ。しかたがないから
   首輪を切ったけれど・・・」
ダル「僕もそう思います!自由のない山羊なんて
   山羊ではないと思います」
私「ああそうかい、自由ね、
  いくらでもやろうじゃないか、表の県道に出て、
  広い道を少し走って、
  すぐに轢かれてしまう自由をね」
モモ「そこまでどじではないと思うけれど・・・
  タヌ公と一緒にしないでくださいよ」
私「でも、一目散に逃げていたという目撃情報は、
 集落の役員から僕に届いているしね、
 ・・・事故は時間の問題だよ」
モモ「・・・・」
私「それとね、おばあさんが丹精こめて
  つくった野菜を君らは狙っているだろ。
  人のつくった野菜を食べる自由がほしければ
  やろうじゃない、見つかったら食ってしまえ、
  といわれるか、あったか村から山羊を追放しろと
  決議をあげられるかも知れないんだよ。
  そうなったら、どうする、せっかくここまで
  一族再興の機運が盛り上がってきているのに・・・
  また、50年前からの暗黒時代に戻っていいのかい?

モモ「でもねえ、どうして、へちまやさんがそんなに
  熱心に山羊のことを心配するの?
  味方だっていっても山羊にはなれないよ」
私「・・・実はねえ、さっきも言ったけれど僕は山羊なんだよ、
  本当は。・・・へちまやという少年が、
  人間のね、小学校5年のときに入れ替わったの。
  その当時は、山羊の黄金時代さ、
  どこの農村に入っても山羊のいないところは
  なかったね。どこかにつながれていたものさ、
  放し飼いもあってね。
  夕方なんか県道を好きなように走ったものさ」

ダル「乳も搾られていたんでしょう?」
私「それはそうさ、それが人間の目的だったからね。
  でも、めちゃくちゃしぼって、山羊を
  殺すようなことはしなかったね。
  あの頃、人はそんなに欲がなかったみたいだからね」
モモ「人間と山羊とが、まあまあうまくいってる
   時代が合ったらしいとお母さんが言っていた
   けれどそのときなんですか」
私「戦後の10年、15年くらいかねえ」

モモ「で、へちまやさんは、どうして人間になったの?」
私「しっ、声が大きいよ、岩に耳アリ、土に穴アリだよ、
  誰に聞かれても困るからね。」
ダル「なんか違うようだけれど、まあいいです。
   で、そのわけは?」
私「当時のヤギの世界に白髭のメイタという
  長老がいてね、彼が、栄枯盛衰は世のならい、
  山羊もいずれ零落するときがくるであろう、
  そのときにいずれ一族再興の働きがいる、
  そのときのために、人間の子供に姿を変えて
  おこうと考え実行されたのさ。
  全国の何百人という子供に山羊の血と遺伝子を
  刷り込ませ体は人間なれど、心は山羊というかたちにしたんだよ」

モモ「へぇ〜、えらい先を考える長老がいたもんですねえ」
ダル「でもねえ、だったら、こんなに山羊が
  少なくなって落ちぶれる前に姿を現して
  対策を打っておけばよかったのに・・・
  ここ5年くらい山羊ブームっていわれているけれど、
  山羊族隆盛というほどのものでもなんでもない、
  単なるミーハーだと思うけれど・・・
  もっと早く暗躍を始めればよかったのに。どうですか?

私「そこなんだよね、・・・どうもねえ、
  時間がセットされたいたようなんだよ、
  世紀がかわるころに動き出せという指令の
  ようなものが・・・僕も不思議なんだよね」
モモ「もしかして、団塊の世代に関係ある?」
ダル「定年退職っていっせいに騒ぎすぎと思ったけれど・・」
モモ「だいたいイノシシ年の1947年生まれだよね、
   真ん中が・・・
   イノシシならわかるけどなあ。
   僕らの一族かなあ本当に」
私「だけどね、疑うなら僕が人間からどう
  扱われているかは、君らも知っているだろう」
ダル「うんまあ、高く評価されていないことは
  はっきりしているね、山羊が好きですというだけで、
  ああそうって警戒を解かれ、
  ついでに信用や権威までも引き剥がされて、
  もうくっつかなくなっているところがないですか
  このあいだなんかガンジーも山羊が好きだったと
  叫んでも、あまり相手にされなかったもんね」
私「そうなんだよ、人間として同族に
  あらずと警戒されているんだよ」
モモ「警戒かな〜、軽視じゃあないかなあ。
  アルプスの少女ハイジなんか人間だと思うけれど、
  あのペーターは山羊の生まれかわりかなあ。
  頼りない感じがしますねえ」
私「ふっふっふ、たぶんそうみせかけているんだろうねえ」

ダル「ほんとうかなあ、へちまやさんは、
  山羊一族の再興のためにどうするんですか?」

私「まず、君らにおとなしくしてもらう。
  立派な山羊になってもらう。戦国武将の
  子供の養育係りのようなものだね。・・・
  だからさあ、もう家出はやめて
  おとなしく小屋で過ごしてよ。
  それがお家安泰一族再起の第一歩なんだから」
モモ・ダル「な〜んだ、結局そこへ行くのか・・・
  今日のところは信じてもいいですけれど・・・」

私「しっ、声が大きいよ、イノや羊に聞かれると
  面倒だからね、ほら小屋に着いたよ。
  さあさあ、入って入って、・・・
  話は明日またしようね」

モモ・ダル「うん、信じていないけれど・・・
  まあお休みなさい。明日も迎えに来て、
  密談しながら散歩してね
  ちゃんと外に出ているから」



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posted by 村のトイレ屋 at 23:43| 山口 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 山羊・羊とチーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
へちまやさん、実はわたしも・・・
からだは人間、こころは山羊。
一族のために、日光で頑張ります。
Posted by はたかおり at 2006年09月28日 13:15
今度の山羊サミットに集まる人は、
実は、・・・
Posted by へちまや at 2006年09月28日 18:47
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