2006年08月25日

保屋野初子著「長野の脱ダム,なぜ?」(築地書館)

長野県の田中知事が選挙で落選して、
「脱ダム」の動きが、どうなるか、
長野では既にダム建設が再開される動きがあるそうですが、
それはひとつのエピソード的バックでしかなく
「ダムに頼らない河川のあり方」というのは、本質的な趨勢で
もう止めることはできないのではないか。
この本を読んでそう思いました。
このブログの8月4日で、金子正尚さんの自分史「佐波川と私」を紹介しました。
その中で、ダムと川についてのご意見を紹介しました。
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洪水を防ぎ、年間をとうして一定の水量にしていることは、認めつつ、「大水が出なくなった。したがって川の大掃除がされず、ところによっては土砂が堆積し、川底があがる」「1年に一度は、川の大掃除になるような大水が出て、川底を洗い流し真っ白い河原が見られるような川に戻すことは考えられないだろうか」と書かれている。
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そのコメントで、私は、朝日新聞に紹介された国土交通省の政策転換、「溢れさせて洪水に対応」を書き込み、金子さんの提案は、ずいぶん可能性のある話だなあと思っていました。(8月13日に新聞記事)

その記事というのは、以下です。
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http://www.asahi.com/national/update/0813/TKY200608120410.html
あふれさせる治水へ、住宅周囲に堤 国交省方針
2006年08月13日08時44分
 国土交通省は、伝統的な水防技術「輪中堤(わじゅうてい)」や「二線堤(にせんてい)」を活用し、河川の水があふれることを前提として洪水から住宅地を守る「洪水氾濫(はんらん)域減災対策制度」(仮称)を来年度から創設する方針を固めた。次の通常国会で関連新法の制定をめざす。これまで国の治水政策は、あらゆる河川に堤防を築き、上流にダムを建設して洪水を封じ込める手法に重点を置いてきた。これに対して公事業費が減り続ける中、記録的豪雨が頻発する近年の傾向を踏まえ、川があふれても住宅被害を最小限にとどめる新しい治水の仕組みづくりを本格化させる。
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コンクリートと近代土木技術で、いわば力づくで川をコントロールする方法(と考え)に対して、柔らかな発想、溢れさせて、川の動きにあわせて都市や住宅や農業のあり方を(人間の生活のあり方を)対応させていく。この方法は、新聞記事を読んだときに、どこかで聞いたことがあるなあ、と思っていました。
ひとつは、柳川の広松伝さんとその仲間の方々のによる研究でおききしていたのでした。「もたせ」という柔らかかい川とのつきあい方があると教えていただいていたのでした。
また、富山和子さんの「水と緑と土」(中公新書)「川は生きている」(講談社)「水の文化史」(文藝春秋)という一連の著作にも書かれていることを思い出しました。

前置きが長くなりましたが、「長野の脱ダム,なぜ?」という本は、
これらの「ダムに頼らない河川とのつきあい方」を整理した本です。
2000年、田中知事の当選と「脱ダム宣言」にあわせて緊急に出版されたという事情はありますが、ここ100年の河川ヘの思想ー行政ー技術のコンパクトな整理となっています。
アメリカの脱ダムからさらに進んでダム撤去ヘの動き。
オランダ、ドイツの生態系配慮の「氾濫原」の仕組みの紹介。
そして、日本の近代100年余の河川管理とダム建設の仕組みの検証。
明治以前と欧米からの技術取り入れによって、明治以降とが見事に切断されていること、「ダムを建設せざるをえない社会の仕組み」が明かされています。

おもしろいと思ったのは、「氾濫を前提にした治水方針」は、既に1977年に「総合治水対策」として流域管理」という考え方とともに、河川審議会で答申され旧建設省で採用されていたことです。
そうした前提のうえ、2000年12月に河川審議会が「川の氾濫を前提にした流域管理」を提言している。
この夏の国土交通省の「方針転換」は、この流れの中にあるということですね。
この整理にこの本は、とても役にたちます。
この流れの推進力として、住民のたたかい、研究者の研究と発言などがあるのは、もちろんです。
この本の終わりで「いまひとたび”共水社会を”をつくる」と提案されています。
有益な提案に満ちているけれど、結局、河川の担い手、管理者として、流域住民がどれだけ参加するかどうかにかかっているように思います。
そういう意味で「流域を単位に水循環で再構築する社会」の提案の項は、とてもよいと思いました。

佐波川の場合でいえば、「年に一回くらい大水で河川を清掃する」という金子さんの意見も、けっして荒唐無稽なものでなくて、きちんと技術的に取り込んでいけばとても大事なものになるのではないでしょうか。
また、汚水・排水の問題も、水循環の全体の中で考えていくべきものと思いました。


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posted by 村のトイレ屋 at 07:35| 山口 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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