2011年02月12日

「殺処分」と「命を頂く」

宇部の常盤湖の殺処分のこと、
トイレの話から始めるのはどうかと思うけれど、一番に思ったのは、そのことだったのでやはり書くことにする。
京都の老舗の麸屋に玉置半兵衛という人がいて、父祖伝来の教えを『あんなぁよおききや』という本に著している。
そのなかで、「うんこが汚い」と言ったら、父親に説教をされた話が書かれている。
次のように言われたそうだ。

「動物も植物もみんな生き物には命があるのや。人間と同じ尊い命を持っているのや。便所は、人間が生きるために殺して食べた動物らのお葬式の場所なんや。家のお仏壇をきれいにしておくのと同じで、人間が食べた生き物のお葬式の場であり、お墓と思うて感謝の気持ちで、便所はいつもきれいにしておくもんや。」
「『人間が万物の霊長』や『人間が動物の中で一番偉い』と言うのやったら、人間にしかできんことを、他の動物にしてあげてこそ、万物の霊長と言えるのや。わかったか。もう今から、うんこが汚いなんて言うたらあかんぇ。明日からうんこに手を合わしてあげや。」

畜産や動物園の殺処分とトイレの話は、もちろん違うのだろうけれど、とくに畜産という経済動物として飼われて、いずれは肉や乳や卵を人間に提供することを最初から義務付けられて、飼養される動物たちだから、人間への感染が問題となれば、それを防ぐために「殺処分」という措置が必要なんだという考えが成り立つとも言える。けれど、いつも、なにか喉になにか引っかかっていた感じが残っていた。

大量に殺すのならもう大量飼い・大型経営の畜産は禁止すべきだし、動物園型式もやめるべきではないのか。そうでなければ、「生かす第3の道」を真剣に考えるときだと思う。
数年前の山口県阿東町の時は、対策の手際の良さに感心したが、それをいつまでも踏襲するようでは、養鶏は成り立つまいし、そこまでして安い卵や肉を食べる権利は人間にはないだろうとも思う。宮崎県の口蹄疫騒ぎでは、人の叡智とはこの程度のことなのかと専門家と言われる人たちに疑問をもった。

ひとつの流れが生まれたときは流されるのが楽だ。でも、自分で考え判断していないときには後悔が残る。とくにパニックになって冷静な判断を放棄したときには、とくにそうだ。

今、私が考える材料にしているのは、次のメールマガジンである。

「宮崎口蹄疫騒動を検証する」 原田 和明
1回、14回、23回、28回それと最新号の32回がとても参考になる。「ウイルスとの共存」「大量処分でなくて、生かして行く解決策」を必死で探っているからだ。そのために細かに事実経過を追って検証されている。現場の畜産農家と行政の対応が、描かれている。

また、原田さんのメールマガジンで紹介されている、山内一也東京大学名誉教授の人獣共通感染症の講座を丁寧に読もうと思っている。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsvs/05_byouki/ProfYamauchi.html

ペットと経済動物とは違うと言われる。経済動物の場合は、最後は命を頂くということが出発点にある。その覚悟が最初にいる。でも、それは無闇矢鱈に殺して良いということにはならないと思う。自分の手で呼吸する音の聞こえる動物から目を見ながら命を頂くというのが、畜産農家の命を頂くという儀式が原点にあることであり、巨大な穴を掘って機械で放り込むような殺す側に痛みのなんにもない方法を続けて行けば、それは人間の側に荒廃しかもたらさないのではないだろうか。

玉置半兵衛の言葉は、日本の精神文化に脈々と流れる生命観を表している。便所を命への感謝の場としている発想は、生き物とのつながりをはっきり自覚している言葉だ。原田さんの報告には、ヨーロッパの畜産での、命をむやみに奪わない工夫と模索が報告されている。何でもヨーロッパの先進事例を持ち出して説得材料にするのは大嫌いだが、日本やアジアの生命観にたった独自の工夫や模索がもっと論議されていいと思う。私は、たまたまトイレ屋だから、トイレで命を学んだが、多くの人がそれぞれの場で命への共感を身につけているはずだ。葛藤なしに水洗トイレに命を流してしまうように、人任せでいいと言うことではあるまい。

引用
●「宮崎口蹄疫騒動を検証する」 原田 和明
http://archive.mag2.com/0000083496/20110207143606000.html
●玉置半兵衛著『あんなぁ よおききや』(京都新聞出版センター,200年)



posted by 村のトイレ屋 at 10:22| 山口 ☀| Comment(0) | 山羊・羊とチーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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