広河隆一著『チェルノブイリ報告』(岩波新書 1991年)を読んでいたら、次のような一節があった。
とりあえずメモだけしておく。
エレーナという研究者の発言を著者が紹介している。
「原爆が落とされた広島と長崎の場合は多量の被爆が問題となりましたが、チェルノブイリは事情が違っていて、ここでは人々は少量の放射能にさらされています。少量と多量ではどう違うのでしょうか。多量の場合は、遺伝子を損傷します。少量の場合は、損傷でなく変異させ長い間に進化に影響を与えます。
放射能だけでなく、化学物質でも同じです。放射能なり化学物質なりが直接生物体の遺伝組織に入り込むと、一番影響が大きいのです。相互作用の影響です。低レベルの汚染で変異した染色体に反応のきっかけを与えないために、危険物質を避けなければなりません。汚染食物、アルコール、日光のX線で肌を焼くこと、化学工場で働くこと、公害の多い町中に住むこと、こういうことはすべて避けなければなりません」とエレーナは語った。
この根拠になっているのは、細胞分裂のはじめにある段階の細胞が鋭敏で影響を受けやすいという発見だという。妊婦、成長期の子供に影響が強いのはそのためだという。
同書 第4章 死に瀕する子どもたち
低レベルの放射能の恐怖 より 204p
受精卵が細胞分裂をはじめてから脳を初め、ほとんどの臓器が出来るのは受胎後8週の間です。
この時期の胎児(正しくは胚芽期)は環境ホルモン、有害化学物質に対して高感受期(ウインドウ期)にあるといわれます。
環境ホルモン、有害化学物質は極低量で遺伝子配列を変えない変異をもたらします。
恐ろしい話です。
『チェルノブイリ報告』読んでみます。
ご紹介ありがとうございます。
化学物質の人体への影響の研究と放射能の影響が、基礎的なところで結びついて研究されるといいですね。
それにしても、温排水に放射能廃棄物が入っていて、海水で希釈されれば良いという考え方に驚いています。(2010年11月19日のブログを参照してください)