2009年08月01日

三浦しをん著『神去なあなあ日常』


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三浦しをん著『神去なあなあ日常』 徳間書店 2009年5月

あらまし。
母親と高校教師にはめられて強制的に森林の研修生にさせられた若者の手記という形をとった小説。
横浜の都市で育った若者が,三重県の林業地帯に入って送る山の生活。
冒頭、いきなり携帯電話のバッテリーを抜かれて捨てられてしまう。
最初は、まちへの逃亡を試みるが,失敗。
山の手入れの訓練と林業に従事する人びととの交流を通して、やがて落ち着いた日々を送るようになる。
村の昔からの祭りや林業の智恵が折り重なっていく。
定住するかどうか,さらに林業をつづけていくかどうかは
未確定のまま小説は終る。

感想。
都会の若者が、余儀なく山の田舎の生活を送るようになる。そこで都会にはない、今の日本が忘れてしまったすばらしさを見つけ,農山村のよさを知って、新しい自分を発見するというテーマである。
「余儀なくされる」という強制・半強制という契機を「自発的意志で山の生活に入る」とした場合は,どうなるだろうか。
その前提には、都市の若者に農山村をもっと知ってもらう必要がある。
きっかけになるPRや体験実習が必要だ。

知らない・知らされていないことによって、実に多くの若者がチャンスを逸しているのだと思うと残念である。
この小説は、その意味では,とても大きな役割をはたしていると思う。

もう10年になるだろうか、阿武町福賀の山の中に全寮制の若者向け森林学校を誘致したらどうだろうと話しあったことがある。実際には,この構想は深められてなくて、あったか村の村つくりに合流しているのだけれど、あったか村の中に「都会の若者の林業参加」という「神去村」の要素を取り入れていきたいと思う。

メモ。
タイトルのなかにある「なあなあ」とは、著書による造語で「まあまあ、ゆっくりいこうやあ」と言う意味らしい。タイ語の「マイペンライ」にも通じるようだ。「神去村」に対して,「神来村」をどこかにつくったらどうだろうと思う。なお,この本では,杉花粉症が林業地帯の林業従事者にも流行して困っている様子が書かれている。私の見聞では,杉花粉の飛び交うなかでも、山の地元では花粉症にかかっていないひとがほとんどだったので,地域によってちがうのだろうか,全国的には変わってきているのか,気になった。









posted by 村のトイレ屋 at 07:17| 山口 ☁| Comment(2) | 本の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「都会では何もしなくても1日が終わってしまう。田舎では何かしなくては1日が終わらない」と何かの本で読んだ記憶があります。田舎が素晴らしいのではなく、自分自身を素晴らしいと思えることが都会との違いであるように思います。街ではどうしても他人と比べてしまいます。競争は悪いことではありませんが、共通のモノサシがない事柄も沢山あります。便利さもそれと引き換えに個性や工夫を奪います。先日当店の(バーです)エアコンが室外機の漏電の為、丸一日使えない日がありました。室温31℃。なんとかしようと複数ある冷蔵庫を一部切ってみたり、インテリア用の古い扇風機を使ってみたり(二つあり、両方とも昭和のもので一つは芝浦製作所製。動いたからびっくり)、照明を絞ったり、氷をグラスに入れて何ヵ所かに置いてみたり、あれこれやって温度計を見てみると0.5℃上がってました。たがしかしこうやって不便のなか工夫するのは非常に楽しく(もう嫌ですけど)人間らしいなと感じるわけです。自分の面白さを発見し(最後には温度計に直接氷をあててました。本気でした。怖いです)、またエアコンにも電機屋のエイジさんにも改めて感謝できるのです。
自分の輪郭というものを多く他人と接するなかで、認識するのは、なかなか困難なことのようです。
Posted by 息子 at 2009年08月05日 12:40
コメントありがとう。
停電の経験、面白かったですね。

田舎とまちの大きな違いは、
結局、分母の違いではないでしょうか。

人数が多いから十束ひとからげにされるところと
人数が少ないから、とくに若者が少ないからとても大事にされ、存在感がます。
無理にひとを押しのけて個性を発揮しなくても
ありのままが尊重されるといったような違いではないかなあ。

Posted by へちまや at 2009年08月16日 09:09
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